ピックアップレーサー記者コラム|GI全日本王座決定戦 開設69周年記念 特設サイト|ボートレース芦屋
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G1全日本王座決定戦

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濱野谷憲吾

かっこよさとは何だろうか。定義は難しいが、例示はできる。たとえば濱野谷憲吾だ。
デビューは1992年5月。わずか1期でA級に昇格すると直後に一度だけB1になるが、以降27年間A1をキープし続けている。

守りを主体とせず攻撃性を保ちながらもレースがキレイ。本命党ばかりか穴党へのアピール度もある。
ほほえみをたたえたルックスは人を癒やし、言動に洒落っ気もある。
さらに、群れることがない。といって孤立しているわけでもない。
どこからみてもかっこいい。
1997年の常滑から25回連続でSGオールスターに選ばれている理由である。

「新進気鋭の20代」「地位を確立した30代」を過ぎ、45歳になった2018年、さらなる変身を遂げている。自らの意志で攻撃力を回復させた。
2018年の丸亀周年や住之江高松宮記念Vはその代表だが、極めつけは2021年7月のオーシャンカップ(芦屋)。迫力あるセンター攻勢を連発しライバルを圧倒。2007年3月の平和島ボートレースクラシック以来14年4カ月ぶりに5回目の栄冠をつかんだのだ。
「まだまだ若い者には負けられない」と笑顔で語る濱野谷憲吾は、いまなお成長途上である。


瓜生正義

住之江の第36回グランプリは瓜生正義が優勝。年間獲得賞金を1億7278万円とし、文字通り「賞金王」に輝いた。
4号艇での参戦でスタート展示は4コーススロー。動こうとした他艇に譲らず意思表示した。ファンへの思いを大切にする瓜生正義らしい。
「やや合わせていった」というスタートは3コーススローからコンマ09。3番手タイのタイミングだったがスピード旋回を繰り出す。「回るときには決まったなと思った」と語ったのが印象深い。

飾り気のない実直な語り口ゆえ、聞き逃してしまいそうだが衝撃的な発言だった。初動でボートを向けながら「勝利を確信した」と言っているのと同じ。レースイメージができており、操縦テクニックやモーター力に自信があった証拠である。
そして「事故は残念だったですが、回るときに決まったと思った」というコメントには思いやりもある。まさに勝負師の鏡、正統派である。

勝負は厳しい。参戦メンバー個々に物語があり理由や背景があることを、そして、それら要素の総合体が結果であることを視野が広い瓜生正義は知っている。
通算88回の優勝。うちG1タイトル20、SGV11という戦歴だけが価値ではないのだ。


新田雄史

2021年のグランプリシリーズ戦は新田雄史が3コースから鮮やかにまくり差しを決め、3回目のSGウイナーに輝いた。2017年にもグランプリシリーズ戦を制しており同大会V2としている。
表彰セレモニーで「きょうのターンは完璧でした」と振り返りインパクトを与えたが、期すものがあったのだ。
その伏線は1カ月前のチャレンジカップ優勝戦。「思い切りの悪いレースにだった…」と反省したように、まくるかまくり差しか迷い、中途半端なレースで6着敗退となってしまったのだった。

グランプリシリーズ戦の優勝戦が同じ枠番となったのは何かの偶然だろうが、そのチャンスを見事モノにしたことは賞賛に値する。
そして、リベンジを果たし「完璧だった…」となったのだ。

「2022年はグランプリ優勝戦に1号艇で出たいです」と口にしたが、そのためには「もう少し努力します!」とも語った新田雄史。
年が明け2022年新春、地元テレビ局の取材に対しても「グランプリに出るのが目標です。そしていいレースをして楽しみたいと思っています」と語った。
その言葉の背景には「やり切ったと思えなければ勝負を楽しめない」という思いが込められている。


小野生奈

11年以上前、とある解説者が「この子はうまくなる!」と唸った選手がいる。新人時代の小野生奈だ。
デビューは2008年11月の芦屋。期待を集めながら、およそ2年ほど結果を出せずにいた小野は、自ら決めたテーマをクリアしようと日々の練習に必死だった。ボートを自由自在に操るためのテクニックを追究していたのだ。
ターンマークをスレスレに旋回することよりも、「サイドをかけ一瞬で舟を向けること」「回転を落とさず旋回し加速する」自主訓練だった。その解説者は、練習から「課題をもって取り組んでいる」のが分かったという。活躍の予言は当たり、男性上位陣にも負けない存在まで上り詰めている。
すなわち、小野生奈の勝負強さは練習の賜物である。
それも、現状に甘んじない姿勢が貫かれている。常に自己を超えていこうとしているのだ。
プロフェッショナルとして揺るぎない敢闘精神が内面に隠されている。

ボートレース芦屋は2017年にレディースチャンピオンを取った水面。さらに昨年2月にはレディースオールスターも制している。相性は抜群だ。
鍛え上げた迫力あるスピード旋回で男性女性問わず他を圧倒してくれるに違いない。


丸野一樹

昨年12月、「ボートレースなると」のBBCトーナメントは丸野一樹の優勝で幕をおろした。3コースからのまくり差しに「自分でもびっくりしている」と率直に話したが、それは鍛錬の成果にほかならなかった。
焦ることなく「タメ」をつくった1マークは見事。先を急ぎたくなるレースで「待つ」ことができたのだ。野球でいえばボールを呼び込んでのクリーンヒット。「100点のターンだった」と振り返った理由である。

そのメソッドは体幹トレーニング「マルトレ」から生まれている。
身体の構造や機能を根本から学び、運動性能を最大限発揮するためのプロセスに「人間とは何か」「身体とは」「心とは」「心身の融合とは」「試合やレースとは」「結果とは」…という思索が内在している。
だからこそ、昨年7月の大けが(左手の骨折等)からわずか1カ月ほどで復活。周囲に勇気と希望を与えたのだ。
「ケガをしたからこそ人間的にも精神的にも強くなれたと思う」とは至言である。

グランプリ出場を目指した2021年は目標をかなえたが、最後の最後の優勝戦でアクシデントに見舞われた。でも、気持ちは折れていない。今年もきっとレース界を牽引するだろう。


羽野直也

「素直で感じがいい。それがレースに表れている」と言われてきた羽野直也は、デビュー3年半経った大村周年記念でG1初Vを果たす。2017年のことだ。優勝へ導いた「切れ味抜群で鮮やかな2コース差し」に代表されるように、的確でミスの少ない戦いぶりは高く評価され活躍が約束されたかのようだった。

しかし、現実は甘くない。
その後、なかなか結果が出せず「周囲の期待」と「レース実績」に差が生じてしまったのだ。忸怩(じくじ)たる思いであったろう。
課題はエンジン出し。懸命に取り組む姿は時に痛々しいほどだったが、あきらめることはなかった。徐々に機力負けしないレースが増え、昨年の徳山G1ヤングダービーで結実を迎える。
「優勝を目標に出場し優勝できた。やりきれたと思う」と語りつつ「2年前は良くなかった」と苦しい時期のことも正直に明かしている。

「たまたまとか勢いではなく、自分で分かって成績が取れている感覚があります。メンタル面の成長を自分で感じます」という言葉に雌伏の時の奮闘ぶりが垣間見える。
今度の戦いの舞台は勝手知った芦屋。2016年7月の初Vをはじめ優勝3回の実績水面だ。
期待を集めないはずがない。