ピックアップレーサー記者コラム

ピックアップレーサー記者コラム

4320 峰竜太

峰竜太が記念戦線に戻ってきた。その走りは先進的。その源泉は感謝の心だ。「大切なことは多くの人が幸せになること」。その思いのカタチとしてチャレンジ精神に満ちた姿勢を貫くのである。植木や盆栽職人によれば、「完成木というのはあることはありますが、たとえ完璧に育ったとしてもそこが終わりではない」という。峰竜太は天然自然にそれを知っているかのようである。

ほぼ一般戦を走った2022年、峰竜太は169走し88の白星を挙げている。1着率は52.0%だ。
1コース91.1%、2コース44.0%、3コース57.1%とその勝ちっぷりは驚異的。さらに4コース25.7%、5コース30.4%に至る(6コースは0%)。
明確に言えるのは奇数コースで強い。つまり、スピードをもって攻めるのだ。

ALOHAポーズには「思いやり」や「調和」「心地よさ」「謙虚さ」「忍耐強さ」が集約されているが、これはすべての人に向けられたメッセージであり励まし。「あきらめずにがんばればきっとできる」と自らを、そして見る者を鼓舞してくれる。

戦いの舞台は周年記念V4、地区選手権V1などドル箱としている芦屋。2021年10月のびわこ以来のG1制覇の条件は整っているといっていいだろう。


4262 馬場貴也

「あれから景色が変わりました…」馬場貴也はこう振り返っている。
2018年11月の芦屋チャレンジカップ優勝がその分岐点だ。
それまで圧倒的なスピードターンで強豪に迫っていたが、勝ち切れないでいた滋賀支部の新星に大きなチャンスが巡ってきたのだ。と同時にそれは試練でもあった。
優勝戦には峰竜太や毒島誠、石野貴之、赤岩善生、片岡雅裕の名があり、インに構える馬場貴也に襲いかかってくることは必至だった。極めて高い緊張感のなか勝利したのである。コンマ08のトップスタートだった。

その後、2019年のグランプリシリーズ(住之江)や2022年のボートレースダービー(常滑)を制するが一貫して変わっていないことがある。
「もっといいターンができるのではないか」という自己への問いかけだ。

令和4年優秀選手表彰式典で「最優秀選手」に輝いたが、「周囲が高い評価を与えてくれるのはとてもうれしいですが、まだまだ先があると思っています」と真摯(しんし)に語っている。

現、滋賀支部支部長は「役をやらせていただくことで視野が広くなり、多くの方々のおかげでレースが成り立っていることを知りました」というが、それは生来の感性だろう。真面目で一生懸命でひたむきで優しい人なのだ。

今年は近畿地区選手権で優勝するなどリズムもいい。芦屋が楽しみだ。


4831 羽野直也

2022年、大村グランプリの舞台に羽野直也が立っていた。初めてのビッグステージは、若松周年V(2022年3月)・平和島周年V(2022年10月)などの成果がもたらしたものだった。
トライアルセカンド最終戦は大激戦となりファイナル進出にはわずかに届かなかったが、存在感を示している。優勝した白井英治の表彰セレモニーには今村豊さんの姿があった。

そのレジェンドが「これから期待できるレーサーの筆頭格は羽野直也ですね」と明快に語る。
迷いなき果敢な戦いを追求してきた今村豊さんにとって、「判断の良さ」や「思い切り」のいいレースが魅力的なのだ。

新人時代から注目を集めていた羽野直也は、それを証明するかのようにデビュー3年ほどでG1初タイトルを手にしている。2017年10月の大村周年記念だった。
当然、時の人となったが、勝負の世界はそうそう簡単ではない。以降、4年あまりエンジン出しで苦しむことになりタイトルから遠ざかっている。雌伏の時である。

復活ののろしは2021年9月の徳山ヤングダービーであがり、それが昨年の活躍につながっている。
腐らず地道に努力した成果を、芦屋でも愛でることができるだろう。


4350 篠崎元志

篠崎元志は「攻め」の人だ。
その一貫しているレースぶりがあるからこそ、ファンは予想の展開軸として重んじることになるのだ。そこには美学があり、勝ち方へのこだわりがあるのはいうまでもない。デビューからの通算勝率7.23や2連対率50.9%の背景にあるものである。

記念タイトルは2012年の住之江グランプリシリーズと2015年の蒲郡ボートレースメモリアル優勝のほか、G1タイトル7つ。間違いなくボートレース界を代表するトップレーサーを応援する者にとって、あとは結果を連続させ2016年から遠ざかっているグランプリという最高峰に向かってほしいと願うのは当然である。その意味で過去V5としている芦屋で勢いをつけられたら最高である。
全国有数の静水面は全速で攻めるのにうってつけ。インが強いレース場ではあるが、だからこそ波乱への期待が増すというものである。

過去1年あまりの実績では3コースは1着率が18.4%、3連対率は76.2%に及ぶ。絶対的な信頼を寄せられるデータを味方にしたい。また、インコースの平均スタートタイミングがコンマ12と全コース平均の14よりもかなり早いことも覚えておいて損はないだろう。


4028 田村隆信

若松九州地区選手権で末永和也が優勝。登録番号5000番台初のG1ウイナーとなって話題を振りまいたが、そこで注目を集めたのが田村隆信。4000番台初の記念ウイナーとしてヤング世代を引っぱってきた実績があらためてフューチャーされたのである。

リーグ戦勝率1位と修了記念競走優勝という養成所実績をひっさげプロデビューすると、いきなり連勝して周囲の度肝を抜いた田村隆信の初優勝はデビュー1年あまりの蒲郡。G1初Vは2003年の丸亀新鋭王座決定戦(当時の名称)、そして2004年の若松オーシャンカップでSGタイトルを手にしている。デビュー4年半あまり。26歳の時だった。

以降、勝負に徹したレースぶりや展開力、一撃力で多くのファンを魅了し続けている。
そして、勝負強さは年が押し迫り賞金ランキング争いが激烈になればなるほど発揮されてきた。
「気持ちが入りすぎるといけない…」という発言の背景には、しびれるような戦歴とその反省、成果が存在しているのだ。

今年は1月の徳山G2モーターボート大賞で優勝(オール3連対、イン逃げ)するなどリズムよくスタートしている。
これまで優勝歴のない芦屋だが、歴戦の雄らしく的確に勝機をつかんでくることだろう。


4571 菅章哉

「ピンロクでもいい。皆さんが求めてくださるレースを追求したい」と語るとともに”ONE” OR 6STYLEというTシャツを着用している菅章哉は、6着敗退を怖れないレーサー、強い弱いを超えたアスリートである。
ボートレースはファンのため社会のためにあり、それに応えることが選手・関係者の務め。「強い弱い」はそのひとつの要素に過ぎない。ボートレースオールスターファン投票はその証左であり、菅章哉に集まった一票一票に込められた思いは深い。

同時にそれは、「勝ち方」への信任であり「負け方」への共感と言ってもいいだろう。
これまでまくってたくさん勝ったが、まくれずたくさん敗れもした。ああすればよかった、と反省することもあったろう。しかし、直線で伸びて他を圧倒するスタイルを変えることはないのだ。

”ONE” OR 6STYLETシャツは自身を鼓舞するだけでなくファンへの宣言なのである。
だからこそ、思うようにいかず挫けそうな時の姿が大切。たとえ敗れてもピットで朗らかにしている人間力の強さは、強い意志から生まれている。レーサー哲学そのものといっていいだろう。

「強い弱い」を超えた「本当に強いアスリート」は常にファンとともにある。