ピックアップレーサー記者コラム

ピックアップレーサー記者コラム

4189 川上剛

およそ20年前、「たけし軍団」なる一団が誕生した。91期生である。山口剛、長嶋万記、三浦永理らが同期だ。人がいればリーダーが誕生しチームワークが生まれる。いつもその中心にいるのが川上剛だ。現在は福岡支部長である。面倒見の良さは誰もが認めるところだが、その源泉は人の多様性を容認するところにある。西山貴浩の個性を見出し守ったのもこの人物である。

その懐の深さがレースに表れている。
調整は丁寧で徹底的。モーターを見限ることはない。そして、レースは厳しくも緻密。粗削りではないのだ。
たとえば、昨年1月からのコース実績にそれは顕著。2コースの3連対率は69.3%。4コースは61.3%もある。的確に行き場を見出し差し込むスタイルが多い。ただ、攻める時は果断にいくのも事実。戦法は多彩である。

地元中の地元の”芦屋”は、これまでV6。負けるわけにはいかないシリーズである。ファイナリストになれば芦屋G2以上初優出だ。
今年のゴールデンウイーク戦は堅調に戦い、インからトップタイのスタートを決めて優勝している川上剛。
名実ともに、ボートレース界のリーダーとして活躍するための起点としたい大会がやってくる。


4193 郷原章平

ボートレース芦屋での実績レーサーを挙げる時、欠かせないのが郷原章平。
2006年2月に優勝しているが、これがデビュー初Vだった。
以来、2017年の正月レースまでV5としている。
また、A1とA2合わせたA級は連続25期。実力の証明である。

その端正で優しく大らかな人柄同様、レースも極めて優等生。流れを重視した期待通りの自然な戦いを演じてくれるが、持ち味はスタート力だろう。判断の主導権を握る位置に構えることができるのだ。
ゆえにイン戦で強い。昨年1月以降のイン1着率は79.7%。十分信頼に足る実績をマークしている。
さらに、2コースの2着率が34%余りあるばかりか、センター戦の3蓮対率が65%を超えているのだ。舟券作戦を構築するのにこれほど頼りになる存在はなかなかいない。

一昨年はG2以上参戦が2回、昨年は1回きりだった郷原章平。今年は福岡の九州ダービーに続き2回目の参戦だ。地元芦屋とならば負けるわけにはいかない。
スタート力を駆使するだけでなく、コースの特性や傾向、さらに天候などの要素を組み入れ、ライバルに先んじる作戦でシリーズを牽引(けんいん)してもらいたい。多くが期待している。


4398 船岡洋一郎

「後輩を見てもう少しがんばろうと思いました…」。
船岡洋一郎は今年4月の宮島周年優勝後に、こう語っている。

98期生で広島支部の中堅として活躍してきたが、記念タイトルがないまま35歳を迎えていた。
大上卓人・村松修二・實森美祐など、広島支部の若手には勢いがある。刺激になったのは間違いない。

それまで通算14回の優勝を飾っていながら、地元Vがないという七不思議は語り草になっていた。
よもや”伝説”になるのではないかと…。
しかし、26回目の地元戦優出でジンクスを払拭。加えて、G1初制覇をやってのけたのだ。3コースからの鮮やかなまくり差しだった。「びびりながら乗ってました」とは正直な気持ちだろう。

デビュー当時から「見るものがある」と評価されていたが、その最たるものが操縦テクニックだった。ハンドル操作が速いだけでなく流れるように滑らかなのだ。ゆえに舟がスムーズにストレスなく向いていく。
その繊細な感性は微妙な調整にも生かされ、舟足を落とすようなことがないばかりか、たとえ劣勢な状況でも改善してきた。
なにやらその技は「名手」の名にふさわしい。このシリーズ、その巧腕を見てみたい。


4812 西野雄貴

西野雄貴は真面目で実直。何ごとにも一生懸命な人物である。
その姿勢は養成時代から一貫しており、惜しまず努力した。
”華の114期”にあって4番目の勝率6.91をマークし修了記念競走で優出している。(結果は6着)
初勝利はデビュー6走目。5期目にA2昇格。デビューから2年1カ月の2016年6月には住之江で初優出初優勝を飾っている。
羽野直也を筆頭に、養成所チャンプの松尾拓・中村桃佳などの同期精鋭とともに「すごい新人がいる」と評判になったものだ。

しかし、好事魔多し。
2017年2月にレース中落水。左腕の神経を断裂してしまう。復帰どころか、生活機能の回復さえ危ぶまれるほどだった。医療関係者によれば、「神経は個人差が大きい。それに治療段階で目に見えるような改善がないことが多い」という。
事実、その身体や感覚に変化がみられ始めたのは4カ月ほど経過してからだった。

そこからわずか3カ月ほどで奇跡的な復帰を成し遂げた西野雄貴。まさに、魂の人である。
7月からの新期を含め8期連続A1としているように実力は十分。あとは流れと勝機をいかにつかむか…だろう。芦屋の水面を滑走する雄姿に期待したい。


4825 倉持莉々

2022年1月、徳山は歓喜に沸いていた。倉持莉々がデビュー初Vを飾ったのだ。
それも準優1号艇で敗れ優勝戦は3号艇に…。コンマ01というギリギリのスタートから混戦を制し”抜き”で手にした栄冠だった。

「絶対に優勝するという気持ちで臨みました。たくさんの人に喜んでもらえてうれしいです。これからもっとたくさん勝てるように精進していきます」と発言。ホッとした表情が印象的だった。

その経歴は余りあるもので、青春を打ち込んだ水球では日本代表になっている。
さらに、その情熱と素質をボートレーサーとして開花させようと養成所入所を決めたが、”ホジキンリンパ腫”という悪性リンパ腫に罹り、入所が決定していながら断念せざるを得ない事態に陥っている。
挫折してしまってもおかしくないが、そこはアスリート。再度受験し入所を果たし現在に至っているのだ。「あのまますんなり入っていたら続かなかったと思う」という言葉は率直な感想と受け止めたい。

2022年前期は初のA1昇格を果たしたばかりか優勝も飾った。そしてSGオールスターに出場し水神祭も飾っている。
まさに今大会の花である。男子相手の活躍に期待したい。


4932 新開航

「同期優出一番乗り!」
これは、新開航のデビュー当時の宣言である。
修了記念競走Vの板橋侑我や養成所勝率1位だった宮之原輝紀をはじめ、栗城匠・吉川貴仁・木谷賢太など精鋭ぞろいの118期にあって、あえて高い目標を掲げたのだ。

野球が大好きで小学生時代に全国制覇。香港の世界大会に出場したこともあるアスリートは、「あの緊張感いっぱいの経験が大きいかもしれません」とプロレーサーになってからの足跡を振り返っている。

のちに大学に進学するが、「テレビを見て気になっていた」ボートレーサーの夢を捨てることができず養成所に入所。デビュー4走目に地元芦屋で初勝利を飾っている。6コースからの鋭い差しだった。その時の3連単は22万6310円、2連単に至っては57万9900円という超高配当だった。

そして、宣言した「同期優出一番乗り」だけでなく「優勝一番乗り」も現実にした。初Vは2018年1月の芦屋であった。

記念Vは栗城匠(2021年5月平和島周年記念)と板橋侑我(2021年11月浜名湖周年記念)に先を越されているが、今年はここまでV5(5月末)と飛ばしに飛ばしている。勢いは誰にも負けない。