ピックアップレーサー記者コラム

ピックアップレーサー記者コラム

4959_井上忠政

尼崎の「ボートレースレディースVSルーキーズバトル」もいよいよ最終日である。優勝戦メンバーは以下の通りだ。

1号艇 井上 忠政
2号艇 渡邉 優美
3号艇 西橋 奈未
4号艇 佐藤 航
5号艇 中里 優子
6号艇 高橋 竜矢

オール3連対でポールポジションをゲットした井上忠政は119期のエース。養成時代のリーグ戦勝率は8.39と驚異的だ。
養成所における近50期、25年間でこの8.39を上回った者はふたりしかいない。96期の新田雄史(8.48)と108期の江崎一雄(8.64)だ。あのグランプリウイナー瓜生正義でさえ8.31である。
勝率8点台は勝ち切らなければ獲得できない水準。その勝負スタイルの根底に「攻撃性」があるのはいうまでもない。
まくるべきところでは果断に行くのがスタイル。迷いがないのが特長である。
今シリーズも5日目までに7勝しているが、内4つがまくり決着。あとは逃げ2本と差し1本である。
数字に強さが表れている。

鳴り物入りでプロデビューし、実際に活躍しているのであれば意識過剰になってもおかしくないが、井上忠政はいつも自然体。そして、フランクで機転が利く。明るさは天下一品だ。
つまり、視野が広く、相手への思いやりをもつ若者である。まぎれもなく近畿の新たな一等星である。

今期A2に甘んじているが、実力はまぎれもなくA1級。
きょうの最終12R優勝戦で勝利し、「個人優勝」と「団体優勝」の両方を手にするとともに、記念戦線への足がかりとする可能性が極めて高い。


4819_蜂須瑞生

「素直にうれしいです。ドキドキしましたが、展開がよかったです」。1年あまり前、こう話したのは蜂須瑞生。2020年12月の丸亀「男女W優勝戦」で2コースから差し切り初優勝を飾っている。

「調整が課題。乗れる時と乗れない時の差が激しい…」と自己分析したこともあるが、初Vを飾った期間に5.31の勝率をマークすると今期も5.28。復調傾向にあるのは間違いない。

レースの魅力のひとつはスタート力。バラツキがないわけではないが、コンマ10前後に飛び込んでくることが多い。それも決まり出すと連続する。
今節も2日目から3日目にかけ0台3連発。3日目12Rは2コースまくりを決めている。
「ボートレースレディースVSルーキーズバトル」の女子準優勝戦5号艇はスタート力の成果でもある。

幼い頃に祖父と見たボートレースが出発点。2014年5月に桐生でデビューし憧れをカタチにしたが、「養成所と実戦のスピードの違い」を実感。そこから再び鍛錬が始まった。2020年12月の丸亀での初Vは、座右「努力は才能に勝つ」を実現した恰好だった。

「ペラ調整だけじゃなくて乗り方も工夫しています。それだけで全然違うと思いますし、まず意識することからはじめないと変わっていかないですから…」と自分が鍛えるべき方向性は明確である。
ファイナリストになるため成すべきことは本人が最もよく分かっている。


5087_佐藤航

「ボートレースレディースVSルーキーズバトル」は佳境に入りつつある。女子レーサー24名とルーキー24名(登録6年未満)のバトルは予断を許さない。
一人だけがその栄冠にたどり着ける「個人優勝」(優勝賞金80万円)のほか「団体優勝」チームの選手には「団体賞10万円」が支給されることになっている。

佐藤航は、その両方を手にする勢いである。
初日はインから差され2着スタートとしたものの、2日目の2走はともにまくり差しを決め連勝した。3日目終了時点の得点率8.50は9.80の井上忠政に次ぐ2位だ。

2019年5月デビューの124期生は、戸田のデビュー戦でいきなり3着を奪取。素質の高さを示した。さらに、3大会目の7月桐生では水神祭を飾っている。
プロ3年目の22歳は、2021の年最優秀新人選手に輝いた同県の2期先輩畑田汰一に次ぐ大型新人として注目を集めている。
まだ優勝はないが、2022年前期勝率は5.82。初のA2級に昇格している。

父とともに戸田でボートレースに親しんだ少年は、天然自然にレーサーを目指すことになった。体を動かすことが好きで、ソフトテニスやソフトボールの競技経験を経て高3の秋に一発合格している。

天職に就くという少年の夢は実現した。次なる目標は「優勝」だ。これまで2回の優出はともに5着。3度目の正直にしたい。
それが叶えば「個人優勝」と「団体優勝」の両方を手にする可能性が極めて高い。


4961_西橋奈未

西橋奈未のデビューは2016年11月17日の三国。1期目は1.75の勝率ではじまったが、すぐに3.58まで上げると2020年後期適用勝率を6.18とし、A1昇格にあと一歩まで迫った。以降4期連続A級(A2・A2・A1・A2)である。
初Vは2020年11月のボートレース芦屋。男女混合戦だった。予選から男子レーサーを圧倒し優勝戦はインから逃げている。
「男女混合戦で優勝するのが目標でした」とは本心。高校時代、弓道に打ち込み歴史が大好きな工業女子は、「女子と男子が対等に勝負できる」ところにボートレースという競技の魅力を感じたのだった。

「何ををやってもうまくいかず1年が10年のように長く感じた」養成時代、「先輩との差があまりに大きくてまったく勝負にならない」と実感した新人時代を経て、いまはファンの信頼厚きプロレーサーに成長した。ボートレース桐生で開催される「第6回レディースオールスター」(2月22日~)のファン投票は8位(9653票)である。人気も実力もほんものだ。

「歯が立たないなら練習するしかないと思い、モーターが焼きつくくらい乗って乗って乗り通した…」成果は確実に表れている。今シリーズ、尼崎は初出場ながら1着も取っており不安は解消した。

序盤やや劣勢な紅組(レディース)にあって、先頭を切ってルーキーらに立ち向かっていく西橋奈未。勝負の急所に的確な矢を射るに違いない。


4456_鎌倉涼

その可憐さと穏やかな人柄、そして的確なレースぶりで人気を集めている鎌倉涼。
デビュー2年11ケ月でプレミアムG1レディースチャンピオンに出場。いきなり優出して周囲を驚かせたのは2010年春。
あれから12年。深谷知博と結婚(2016年)し約3年間の産休を経て、たおやかな魅力を加えファンの期待に応えている。

2021年はSGボートレースオールスターに6年ぶりに出場。11月の多摩川レディースチャレンジカップでは優出したが、残念ながら6着敗退。「合わせ切れていなかったですし、1Mも失敗してしまいました…」と、報道陣に語る素直さが印象的だった。女子賞金ランキング13位で惜しくもクイーンズクライマックス出場を逃したのに…である。

その姿や受け答え、さらに年間V5に4期連続A1級という多才さが高く評価され、「第6回レディースオールスター」(2月22日~桐生)には6位で選出されている。

そのレースの特徴は確かなイン戦(1着率74.6%)にあるだけではない。
2コース差しが巧く1着率は31.7%に及ぶうえ、3コースと5コースの勝率が高いのだ。
つまり攻守のバランスがバツグン。たおやかさとは硬軟併せ持つところにあり、たとえ男性が相手でも威力は変わらない。


4928_栗城匠

2021年5月20日、平和島で男泣きする若者がいた。栗城匠である。
学生時代、水泳や陸上・空手などをたしなんでいたが、テレビで知ったボートレーサーの魅力は際立っていた。「絶対に選手になる」と決めたのは中学時代。3年生の時から受験していたという。

しかし、合格は8回目。7回も落ちているのだ。2次・3次まで進みながらあと一歩及ばす。苦杯を舐め続けてきたのだ。
それでも、「くじけることはなかったです。あきらめなければ叶うと信じていました」と回顧している。
念願の養成所に入っても苦境が待っていた。「生活態度の問題…」と本人はいうが、乗艇訓練に参加させてもらえない時期が続いたのだ。当時のニックネームは「東都のドボンキング」。そんな状況なら普通心が折れてしまうが、栗城匠は違っていた。教官に直訴し、自ら扉を開いたのである。

あの涙は、その過去を知ると深く理解できる。

同期に最優秀新人選手にも輝いている宮之原輝紀や修了記念チャンプの板橋侑我など精鋭が多い。板橋侑我は昨年秋のG1浜名湖賞優勝インタビューで、「栗城君たちに追いつきたかった…」と心境を吐露して涙した。

他にも、デビュー初優出&初優勝最速の新開航や高速モンキーを持ち味とする小芦るり華など、タレント揃いの118期生の星が、シリーズを牽引することは間違いないだろう。