プロ野球で一流選手の目安となるのは「打率」3割超であるが、ボートレースではどうかと言えば「勝率」7.00超が目安となる。
その中でも今年1月からの成績で7.50を超える選手は約1600人いる選手の中で19人しかしない(9月5日現在)。
グランプリ出場枠が18名であることから、その19人は超一流の証とみてもいいはず。
そんな中、峰竜太は8.62でトップを走っている。絶対的な存在であることを証明する数値だが、これをたたき出すからにはコース不問でなければならない。(以下は2023年1月1日~9月5日のデータ)
1コース 1着率85.4%(3連対率97.8%)
2コース 1着率27.5%(3連対率96.4%)
3コース 1着率40.7%(3連対率81.4%)
4コース 1着率35.1%(3連対率83.7%)
5コース 1着率37.5%(3連対率74.9%)
6コース 1着率10.0%(3連対率60.0%)
近況、「4カドの峰なんで…」とアピールすることもあるが、実際はそれに留まらない。どこからでもファンの期待に応えられるのだ。
今年はここまで、浜名湖のG2モーターボート大賞や住之江のG1高松宮記念特別競走を含めV8。地元唐津は通算24回もの優勝を飾っている峰竜太に全日本王者決定戦優勝歴がないのは七不思議の一つ。70周年の節目の大会で歴史に名を刻んでほしいと多くが願っている。
毒島誠は今年も堅調だ。3月、多摩川と大村の周年記念レースを制するなどここまでV7。賞金ランキングは10位である(2023年09月05日時点)。
ただ、これを聞き、「もっと上位にいてもいいのでは…」と感じるファンもいるはず。G1をふたつも取っている一方、SG競走優出歴がないための現状順位である。
そういう意味で、当大会の存在意義は大きい。
2012年12月のモーターボート大賞で優勝するなど実績を残しているようにみえる唐津だが、出走数が極端に少ない舞台だからだ。近5年間における出走は2022年6月のSGグランドチャンピオンのみ。この時は予選をクリアしたものの準優は5着に敗れている。どこか突き抜ける要素を見出していないのも事実だ。
しかし、「どんなことでも素直な気持ちで勉強し取り入れるようにしています」と語る群馬の巨星に、行き止まりはない。むしろ、結果が出ていなければいないほど突破口を見出そうと奮闘し結果を導くタイプは、職種のまったく違う者の言葉にも謙虚に耳を傾ける。そこにヒントを見出そうとするのだ。
通算優勝回数75、G1V16、SGV7の実績はその証左。単純に相性の良し悪しで論ぜられるアスリートではないのだ。
5月28日、芦屋のボートレースオールスターで優勝。賞金ランキングを2位としている石野貴之(2023年9月5日時点)。SGは以下のとおりV10にのぼる(ちなみにG1はV9)。
2010年7月 丸亀・オーシャンカップ
2015年7月 三国・オーシャンカップ
2016年7月 鳴門・オーシャンカップ
2016年11月 大村・チャレンジカップ
2017年5月 福岡・ボートレースオールスター
2017年6月 鳴門・グランドチャンピオン
2019年11月 桐生・チャレンジカップ
2019年12月 住之江・グランプリ
2021年3月 福岡・ボートレースクラシック
2023年5月芦屋・ボートレースオールスター
この戦歴をもって「夏男」と称されてきたばかりか、本人もそれを自負しているが、裏を返せば、秋口の内容が年末への導火線になるということもできる。
実際、グランプリを制した2019年は、9月に住之江高松宮記念特別競走を、また11月に桐生チャレンジカップで優勝。流れを獲得しているのだ。
秋の序章のこの舞台が、ボートレース界頂点の試金石となるはず。独自に編み出した調整力をフルに駆使し、多彩な戦法をみせる唐津となることだろう。注目したい。
2023年のグランプリ覇者であり賞金王の白井英治が記念戦線に戻ってきた。9月5日最終日の常滑70周年記念「トコタンキング決定戦」は、9カ月ぶりのG1戦だった。
結果、予選突破はならなかったが、シリーズ2勝を挙げるなど健在ぶりをアピールしている。
今年9月6日時点までの優勝歴は以下のとおりだ。
1月1日 徳山タイトル戦
1月9日 下関一般戦
1月28日 徳山一般戦
3月5日 丸亀タイトル戦
4月11日 若松一般戦
5月3日 徳山タイトル戦
6月4日 若松一般戦
6月21日 丸亀一般戦
8月9日 下関タイトル戦
通算V9で賞金ランキングは38位と高くないが、1月からの勝率は8.46。驚異的な値だ。
「若い頃から挑戦する気持ちがすごかった」と評価しているのはレジェンド・今村豊さん。「横着なこともありましたが、言うことをよく聞いてくれてよく成長してくれました」と手放しで称賛し目を細めるほど自慢の愛弟子である。
この6月のびわこでG2レースに復帰、常滑でG1レースに戻ってきたホワイトシャークが、通算V6、2016年のモーターボート大賞も制している唐津を舞台に起死回生のグランプリ出場権獲得にまい進することだろう。
今年6月の徳山グランドチャンピオンを制した磯部誠の賞金ランキングは9月6日時点で第3位。2年連続のSGグランプリ出場を確定的にしている。
「つらくて泣くとか悔しくて泣くという感覚が分かりませんでしたが、あの時はこみ上げるものがありました…」と後日語ったように、感慨に満ちた栄冠だったことは間違いない。
それは苦しさと向き合い、努力してきた過程と表裏一体であった。忸怩(じくじ)たる思いにさいなまれてきた現実があるからだ。
「派手にみえるかもしれませんが、自分は遠い先を見ず目の前の一つひとつを丁寧にやるタイプ。どう戦っていくのかイメージすることもありません。次のレースのことに集中ですね。それから同じ失敗をしないよう心掛けています」とも語っている。一見、大言壮語しそうに感じるかもしれないが、実は質実剛健の人なのである。
学生時代はバレーボールに夢中になっていたというが、バレーボールこそ高い緊張感の中、ワンプレイワンプレイ丁寧にこなしていくしかない競技。余力を残すようなことのできない競技である。そこに「一つひとつ…」の答えがあるのだ。
戦いの舞台唐津で威力あるアタックを繰り出し、ライバルたちをねじ伏せる可能性に期待したい。
「東都のエース」と言われてきた濱野谷憲吾も49歳となったが、そのレースぶりは変わらない。常に「乗り心地」を求め、ボートを自在に操ることで混戦を制してきたトップレーサーだ。
昨年まででSGV5、G1V22。グランプリ出場13大会と燦然(さんぜん)と輝く記録を残しているが、9月5日、これに常滑70周年記念優勝の歴史を刻んでいる。
連日、入念なペラ調整を施したが、そこには盟友というべき池田浩二の存在があった。「彼ならこうたたくんじゃないかなって…」と報道陣に語っている。
その池田浩二は、フライング休みのため当シリーズに出場できなかったが、シリーズ中に行われたトークショーで「濱野谷さんには若い時代からとてもよくしてもらっています」と口にするほど。超一流同士が互いに影響を与えあっている様子を伺わせた。
賞金ランキングについて「できれば6位までに入りたい」と語る濱野谷憲吾にとって、唐津70周年「全日本王者決定戦」は意義ある大会。ここで勢いをつけ、10月の蒲郡ボートレースダービーや11月の三国チャレンジカップにつなげていきたいところ。戦いの舞台は過去V1(2021年3月一般戦)の唐津水面だが、勢いを駆ってシリーズの花となることだろう。