ピックアップレーサー記者コラム

1月7日、強豪メンバーがそろった『全大阪王将戦』で、木下翔太はインから逃げて優勝した。オール2連対で戦い抜いたシリーズを振り返り、「松井さんや石野さんや太田さんがいた中で勝ててうれしい…」と素直に喜びを口にしていた。昨年末のグランプリシリーズ優勝戦、1号艇にもかかわらず落水失格と苦杯をなめていただけにその感激は分かる。 そんな木下翔太が今年、ヤングダービー卒業の年を迎えている。 昨年7月2日、びわこ・イースタンヤングで2コースからまくって優勝した木下は、今年6月の桐生大会でも栄冠を勝ち取った。シリーズリーダーとしてインから押し切り連覇を果たしたのだ。 あとは、GⅠびわこヤングダービーで仕上げを待つのみである。 ヤングダービーは、蒲郡(2017年)と浜名湖(2018年)で優出したもののタイトルにはつながっていない。SG戦線での活躍も光るルーキー世代の第一人者だけに、今年に賭ける思いは人一倍強いはずだ。イン逃げの確かさは言うに及ばず、まくり差しが得意な木下翔太は、勝ちだしたら止まらない。

『大山は違う…』。 先輩レーサー、それも男性の多くがこう言う。その違いは操縦技術にあるという。 SGレーサーの代表のひとり菊地孝平は、「レースへの取り組み方やターンテクニックについて、いきなり核心を突いてくる選手です。質問の質が高い感じです」と語っている。 大山自身も、「体幹を駆使したターン技術の向上」に余念はない。課題を設けて数年になるが、「まだまだです…」と常に自らを戒めるところがある。 昨年は、蒲郡レディースチャンピオンで優勝するなどV5と活躍したが、SG初舞台だった福岡オールスターはドリーム戦4号艇となるなど関心を独り占めにした大山千広。今年は、ファン投票の中間集計でトップ。結果は峰竜太に次ぐ2番目の支持となった。ファンの声援のすそ野は広く圧倒的である。 そして、今年はここまででV5。6月の児島・ウエスタンヤングも制している。オール3連対で通し実力の違いを見せつけた。加えて、美しさがある。ボートレース界を代表するシンボルとしてこれ以上のレーサーはなかなかいない。

SGレーサーで滋賀支部長の馬場貴也が言う。「松山将吾選手は真面目で何ごとにも真摯。研究心が旺盛な人物です。別の言い方をすれば、ものごとを突きつめて考えるタイプ…」。見た目のさわやかさの源泉を教えてくれた。 そして、「センスがいいのでとても楽しみです」と続けた。 ダービーチャンプの守田俊介がセンスを認めたのが馬場貴也で、その馬場が松山のセンスを認めているのである。 「僕が出てきた時よりもずっとインパクトがあると思います。浮き沈みもあるでしょうが、必ず躍進する若手です」と期待と信頼は厚い。ファンが思うのと同じように、先輩選手も応援したくなる人間性も魅力のひとつである。 デビュー当初、「SGに出場し賞金王を獲得したい」と力強く決意を語っていた松山将吾だが、ここまで通算優勝は2回止まり。不完全燃焼の感は否めない。 しかし、焦ってはいけない。馬場支部長がそうであったように、時間がかかっても地道に一歩一歩『スタイルを極める』だけだ。その成長の足跡がきっと活躍につながる。 地元びわこのヤングダービーはその起点となるに違いない。

上田龍星は2015年11月に住之江でデビューした。養成時代の勝率は7.39。7.71でトップの吉田裕平に次ぐ成績を証明するかのように、シリーズの7走目、6コースから抜きあげて水神祭を飾った。 おとなしめで目立つタイプではないが、勝負に対する気概と実行力にすごみがある。 そんな上田にこんなことがあった。 2018年8月、2号艇で臨んだ下関優勝戦で6コース選択を余儀なくされそうになった。ピット離れで後手を踏んだのが原因だった。 …が、「大外は厳しい」と即断。3コースにもぐり込み、1マークを握りマイに出て先行艇を追走した。その粘りが道中逆転を生む。2周2マークで差しが決まり並走。初の栄冠(水神祭)となったのだった。レース後、「苦しい場面もありましたが、モーターも出ていたのであきらめずできてよかった…」と静かに回顧している。 昨年はV1とやや音なしの構えだったが、今年は違う。下関ルーキーシリーズ(1月)・戸田ルーキーシリーズ(1月)・芦屋ルーキーシリーズ(7月)・児島一般戦(7月)と優勝は4回。一気に躍進中と判断していい。上田龍星がヤングダービーの中核となることは間違いないだろう。

新規に登録された年の翌年から3年以内の新人選手で賞金獲得額、勝率が1位となり、令和元年の『最優秀新人』に輝いたのは宮之原輝紀選手。対象期間の勝率は6.13。獲得賞金は2797万円あまりとなっている。2019年は優勝こそないものの、全28節で優出9回と健闘をみせた。 そんな宮之原は、ボートレーサー養成所118期生。リーグ戦の勝率は8.12を記録している。当時の教官は『宮之原は超エリートタイプ』と語っている。 そんな『大型新人』は2016年5月、平和島でデビューし半年間で2連対率12%をマークしている。同期トップクラスの成績だった。期待と予想を裏切らなかったのだ。勝率も、修了記念競走で優勝した板橋侑我が3.40。宮之原は3.39としている。 こうしたプロセスを経て、令和元年の『最優秀新人』に輝いた宮之原だが、クリアすべき課題もある。持ち味である旋回スピードを生かすためにも『安定した速いスタート』の会得は必須だ。記念戦線常連になるための基本条件である。 むろん、『自ら考え、試してみるタイプ』の宮之原輝紀こそ、自力で乗り越えてくるに違いない。

愛知の出口舞有子は今、成長の過程にある。2020年後期、5.64で初のA2に昇格している。 母の勧めでボートレーサーを志した出口舞有子は短大卒。4回目で養成所に合格している。 元々硬式テニスをしていたように、身体を動かすことが大好き。ボートレーサーは志向にぴったりだったのだ。 しかし、プロの世界は甘くない。「展開がまったくみえない」期間が続く。当時は「握って回ることだけを考えていた」という。実際のレースもそうだった。 ところが、そんな出口に変化が生じる。2年ほど前からである。「展開がまったくみえない」といえるのは展開を考えているから。出口は考え続けていたのだ。 それは一緒に走っている女性レーサーにも伝わっていた。『いつも考えている感じ』とか『モーター劣勢でも作戦でしぶとく残ってくるところがある』などの声をしばしば耳にしている。 がむしゃらに全身全霊で取り組み、その経験をもとに考えを深める『癒し系』が次の時代の扉を開ける日がやってくる!